「ハイウォーターマーク(HWM=High Water Mark)」って?

思い出すのが辛くても、忘れてはならないことがたくさんあります。

東日本を襲った大地震や、この地震に伴い発生した大津波もそのひとつでしょう。当時この大きな被害を報道するテレビ番組の中で、レポーターが家の壁の「シミ」を指差しながら「こんなところまで、水位が上がりました。」などと言っていたのを覚えてらっしゃいますか?

レポーターが指差していたその「シミ」が「最高水位」を表すもの、即ち「ハイウォーターマーク」というものです。

海岸沿岸の小高い丘に「これより下に家を建てるべからず。」という石碑が立っていることがあるようですが、これも先人が残した最高水位、ハイウォーターマークというわけです。

さて、この「ハイウォーターマーク」は金融の世界では、意外なところに使われています。

投資家の皆様からお金をお預かりして運用させていただくときに、2種類の報酬を頂いております。

ひとつは「固定報酬」と言い、お預かりした金額に応じて、予め決められた料率で計算されます。この「固定報酬」は主にファンドの管理費用に充当されます。

もう一つは「成功報酬」と言って、運用の成果としてあがった利益に対して頂く報酬です。利益をあげるほどお客様に喜んでいただけますが、それに比例して頂く報酬も増えることになります。この「成功報酬」を計算する際に「ハイウォーターマーク方式」と呼ばれる方法があります。

例えば、お客様から1,000万円お預かりし、一定期間後、例えば1年後に運用が成功して資産額が1,200万円になったとしましょう。その場合、1,200万円からお預かりした1,000万円を差し引いた200万円に対して一定の料率を掛け算して、例えば30%ならば60万円と成功報酬額を算出します。お客様のご資産は1,140万円(1,200万円-60万円)になります。

さて、次の年の運用では、1年目に達成した水準(1,140万円)を基準にして、それを上回った分について成功報酬を計算します。2年目にまた運用がうまくいって、ご資産が1,240万円になっていたとすると、1,240万円から1,140万円を引いた100万円に対して30%を掛けた額(30万円)が成功報酬となります。これでお客様のご資産は1,210万円(1,240万円-30万円)となり、その次の年の運用はこの1,210万円を基準にスタートします。

 

いかがでしょう?「ハイウォーターマーク」の名の通り、基準の金額が最初の1,000万円から1,140万円、1,210万円と、水位が上がるように基準が上がっています。

 

逆に、運用が上手くいかなかったときは

当初から運用が上手くいかず資産を減らしてしまった場合は、成功報酬を頂かないことはもちろん、基準となる金額は1,000万円のまま据え置きとなります。その後も資産を減らしてしまったからと言って計算基準が下がることはなく、ご資産が1,000万円を超えるまで変化しません。どうにか頑張って利益をもたらさなければ、成功報酬は発生しません。

*蛇足ではありますが、運用が1年目は成功し、2年目の運用が上手くいかなかった(例えば2年目に1,050万円になってしまった。)場合は、上の例でいきますと、基準が1,140万円ですので成功報酬は発生しませんし、翌年の基準も1,140万円のままです。

 

このような「ハイウォーターマーク方式」の成功報酬体系ファンドは、お客様の利益と運用者側の利益が完全に一致しているため、最も運用者のモチベーションが高まると言われています。運用者はハイウォーターマーク=最高水準の印を毎年更新しようとして、日々、地道な努力をしています。

干 城

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